校舎を利用して子育てする鳥達の観察記録


       渡り廊下のコシアカツバメ

 本校では、校舎を利用していろいろな鳥が子育てをしていることが、理系生徒の
観察で明らかになっています。
 2019年は、定番のツバメ・コシアカツバメに加えて、ツバメの巣を乗っ取った
スズメ、生徒の出入りの激しい昇降口を選んで子育てをするハクセキレイと
ドバト(カワラバト)が確認できました。
特にこの夏は、ハクセキレイが、コンクリートの地面に降りて、生徒の近くで
尾羽をピコピコと動かして愛嬌を振りまき、
7/23に無事3羽のヒナが巣立って
いきました。

Ⅰ 駆除から救われたドバト(カワラバト)の子育て記録

 学校などの公共施設では、糞を巣から離れたところに捨てに行かないハトは、
駆除されてしまう運命にあると言えます。
 本校でも生徒の出入りの最も激しい昇降口にハトが来て、2個の卵を産み、育て
始めました。おそらくカラスなどヒナの天敵が近づきにくい場所として選んだのだ
と思われます。
 関係機関に連絡して駆除する選択もありましたが、本校の校務員さんは、何とか
糞害の少ない方法はないかと、大型ハト巣箱を設置して、掃除をしながらハト達を
見守り始めました。
 それに目をつけたのは、本校理系生物選択者の生徒達。
大型ハト巣箱に、カメラを設置して、期間限定で観察をすることにしました。


巣にカメラを設置したのは、生徒昇降口の天井付近です。
パソコンにつないで、動画も撮影できるようにしました




木で作った大型ハト巣箱
直接中を覗き込んで観察し、ヒナのデジカメ静止画撮影にも挑戦しました。
画像の右手にあるのが、私達が取り付けた動画撮影用のカメラです。
この時すでに、ハトのヒナは2羽とも巣立ちが近い大きさまで成長していました。

     M君の撮ったヒナの写真(7/23



ハトの観察結果を簡単に3つの観点でまとめました。


① 人間がヒナをだっこして、14分後に親鳥がハトミルクを与えに来たよ!


 
校務員さんは、大型ハト巣箱を掃除する時などに、ヒナをだっこします。

 これまで「人間がヒナを触ると、匂いがついて親がヒナの世話を放棄する」という

説もありましたが、それを否定する考えも多く、少なくとも本校のハトの場合は、

人間によく慣れていて、当てはまりませんでした。校務員さんがヒナをだっこして、

14分後に親鳥が、ハトミルクを与えに戻ってくる様子を、設置カメラで記録する

ことができました。


7/23 1447 校務員さんのヒナだっこ(←クリックして動画を見てください)

7/23 1501 14分後に、親鳥(♂)がハトミルクを与えにきたよ(←クリック)


②ハトの子育て


 
ハトは他の鳥と違い、食道の”そのう”にためた「ハトミルク」を与えて

ヒナを育てるようで、その様子が確認できました。(ミルクといってもミルク状に

なっている物質ということで、哺乳類のミルクとは異なります。)

親鳥のくちばしの横から、2羽のヒナが争うようにくちばしを突っ込んで、

飲もうとしているのが映っています。その時、親鳥は上下に頭を動かして、

吐き戻すような感じでハトミルクを与えています。


 ハトは雌雄両方で、ハトミルクを与えて子育てをしていることも確認できました。

最初に記録された上の動画(
7/23 1501)に映る親鳥は、体が少し大きくて、

鼻の白いこぶも大きいので、雄のようです。

後に出てくる動画(
7/26 1047)に映る親鳥は、体が少しだけ小さくて、鼻の白い

こぶもやや小さいので、雌です。(ハトミルクを与える様子は、あとの
7/26の動画の

方がわかりやすいので、ぜひそちらをご覧ください。)




   B君の撮ったヒナの写真(7/24


 私達がこれまでよく観察してきたヤマガラやシジュウカラの場合、親鳥は頻繁に

えさを運び、えさを与えたあと、糞をくわえて飛び立ちました。

 しかし、ハトの場合は、ハトミルクを与えているせいか、親鳥はそんなに頻繁に

巣に戻ってくることはありませんでした。

カメラを設置した
7/23も、1501にすぐに親鳥がハトミルクを与えにきましたが、

そのあと親が戻ってきたのは、2回だけでした。

 夜間は、親は全く巣に戻ることはなく、ヒナだけで夜を明かしているような感じ

です。

 また、ハトでは、糞をくわえて遠くに捨てに行く行為を見ることができませんで

した。つまり、ハトのヒナは、糞を巣の下に落とすことになり、我々人間にとっては

糞害となるわけです。



③ハトの巣立ち


 巣立ちが近づくと、ヒナは巣の中で、羽ばたきの練習をします。 

7/26
 1047 親鳥(♀)がヒナにハトミルクを与えたあと、1049 1羽の

ヒナが親のあとを追って巣立ちました。


7/26 1047 親鳥(♀)がハトミルクを与える様子
( ↑ クリックして動画を見てください)


7/26 1049 その直後、1羽目のヒナの巣立ち
( ↑ クリックして動画を見てください



 ところが、巣立ったヒナは、そのあと4時間後の1445に、再び巣に帰って
きたのでした。




巣立った直後のヒナは、生徒昇降口を離れません

親鳥は、ヒナが巣立ったあとも、しばらくヒナにハトミルクを与えて世話をする

ようで、もう1羽が巣立たたない限り、巣立った方の1羽は巣を離れられないよう

です。

 学校では、生徒が頻繁に行き交う昇降口に巣をしたので、そこを離れない方が

人間に守られることになり、巣立ったヒナにとっては安全です。

ゆえに、単純に食料と安全が保障される巣に戻ったと思われます。

ヒナは、
7/31に完全に2羽とも巣立ちました。しばらく、生徒達のいる校舎近くに

留まったあと、いつの間にかいなくなりました。

 駆除からハトを救った校務員さんの奮闘と、それに寄り添った私達理系生徒の

期間限定のドバト(カワラバト)子育て観察でした。






Ⅱ ツバメの巣を乗っ取ったスズメの子育ての記録
   (理系生物
先輩達の研究継続)



 2019年度も、昨年度に引き続き、「コシアカツバメから乗っ取った巣」で

スズメが子育て行いました。冬場もずっと、巣を乗っ取ったスズメは、巣を見回り

続けて、ツバメ達が来る時期にも頻繁に巣の中に入って、陣取ってきました。

 子育ては今年も2回確認できましたが、1回目のヒナの確認日は、昨年と同じ

5/6
でした。

 理系生物の授業で観察をして、
5/19にヒナが1羽巣立ちました。




巣立つ寸前のスズメの親子(乗っ取って2年目のコシアカツバメの巣で)

ヒナは巣立とうとしたあと少しためらい、ツバメの巣の奥に一度入ったあと、

一気に巣立っていきました。


ツバメの巣からスズメの巣立ち(←クリックして動画を見てください)

このあと、6/7に小さなヒナが2羽確認されて、2回目の子育てに入ったことが

わかりました。

 今年は、文化祭・梅雨のシーズンにカメラを閉鎖しましたが、どうやら子育ては、

昨年と同じで、おそらく2回であったと思われます。






ヤマガラ・シジュウカラ用巣箱の制作と設置

私達理系生徒で、2019年度も本校定番の「ヤマガラ・シジュウカラ巣箱」を

制作して、校庭に設置しました。

 これまで先輩達は、巣箱内にカメラを入れて木に取りつけてきましたが、経済的

制約で個数は限られます。そこで、もっと効率よく巣箱内動画観察が運営できる

方法はないかと考えました。春になって、巣箱に鳥が入ったことを確認したあと、

素早く木に登ってカメラを内蔵できるようする工夫を、今回は課題として考えて

みました。


チームワークを発揮して巣箱を制作しています




カメラを取り付ける板を作っているところです。
このパーツは、将来巣箱に鳥が入った時に、
木の上で差し込む部分です


巣箱の設置は、巣箱に鳥が入ったあとに作業がしやすい木を選ぼうということに

なっていたのですが、女子班が選んだ木は、割りと高い木でした・・。




木の上で作業をするのは主に男子になるのですが、みんなで安全確認です




写真ではわかりにくいですが、鳥の入った部屋を開けずに、
あとでカメラだけを差し込めるような巣箱になっています


 これから秋冬に、ヤマガラやシジュウカラが巣箱の下見に来てくれるかもしれ

ません。お待ちしてま~す。







おまけ (女子班 記録係Zさんより)


実は、自宅の近くでも、鳥の巣を発見しました!






メジロの子育ては初めて見たので、興味深かったです。

貴重なシーンが見れたので良かったです。

これをきっかけに、もっと他の生き物の子育てについても、調べていきたいです。