ツバメの巣を利用したスズメの子育て記録


 特別講義3教室のベランダにやってきたスズメ(2018.5.16

 平成30年度、3年理系生物選択クラスでは、これまで取り組んできた
巣箱観察とはひと
味違えて、ツバメの巣の入口にカメラを設定し、
そこに出入りする野鳥を観察する研究に挑戦することにしました。 
 本校は、春になると、いたるところにコシアカツバメが巣を作り、
生徒達に守られて育ち巣立っていきます。



 上の写真は、巣立ち直後2018年7月10日に撮った
コシアカツバメの親子の写真です。天敵を避けるために、
ヒナを生徒達が頻繁に通る3階の青空渡り廊下の電線にとめて
親鳥を待たせています。
ツバメにとって人間は、天敵を寄せつけない最良の守り神であり、
そこからツバメと人との密接な距離感が生れたように思います。


 そんなコシアカツバメの観察を始めようとしましたが、
何と3階の特3教室のベランダでは、スズメがツバメの巣を
乗っ取って、子育てを始めたので、予定を変更し、スズメの研究に
切り替えることになりました。




 巣の入口にカメラを設置し、スズメの出入りを撮影できるようにしました。
途中、3つほど事件が起こりますが(後述)、
5/176/20の2回、
スズメのヒナは巣立ちを迎えることができました。

はらはらさせられるスズメの奮闘を、時系列にまとめてみました


☆ スズメカップルの ツバメの巣での奮闘日記


3/16 理系生物クラスで、カメラの設置をしました。
    はしごの扱いは、やはり男子が得意です



3/19 巣に出入りしている鳥が、スズメであることを確認しました。

3/31 744 スズメのカップルが、巣材をくわえて入るのを確認しました。
     (ここからの10日間ほどが、巣作りの期間なのであろう)



4/8 生徒で当番を決めて観察開始。
  スズメのカップルは、見事に2羽でいっしょに行動している事実が
  見えてきました。


                 IWさんの記録より

4/12 親鳥が夕方に巣に入ってから、次の日の朝まで巣に入ったままで過ごす日が
    始まり
ました。(ヒナが確認されるまでの20日間ほどが、産卵期・抱卵期であろう


4/15 526 スズメのカップルが巣の入口でずっと仲良く並んでいる姿が
        見られるようになりました。

          
SMaさんの お気に入り動画(クリックしてみて!)

4/16 1834 そうかと思えば、スズメのカップルが喧嘩をしているようにも見えると
        生徒IWさんは記録しています。果たしてどうなのか!?
           動画(クリック)


4/29 559 事件その1 ハッカチョウ襲来!(Yさん発見)



 動画をご欄ください(ハッカチョウ襲来)
  最後に卵のような塊をハッカチョウがひとつくわえて出ていくのが、
  動画に映ります・・・。

  静止画 (動画より切り出したくわえた瞬間)



5/4 ヒナが1羽生まれていることを発見。(IWさん)

5/7 夕方にヒナが2羽になっていることを確認。(Oさん)
     このあと、親鳥は頻繁に「えさやり」と「糞捨て」を繰り返しました。


 5/9 えさやり(SHさん記録より) エサやりシーン動画

5/10 糞捨て(SB君記録より) 糞捨てシーン動画



5/14 1558 事件その2 ヒナの落下  動画

      2羽しかいなかったヒナのうち1羽が、巣から落ちてしまいました。
      ヒナが命を落とす原因として、ヒナの巣からの落下も多いようです。
      動画で確認する限り、親がもっと巣の奥でエサをやるようにすればと
    思うのですが、食欲旺盛なヒナは身を乗り出してエサを求めてしまう
    ようです。

      後日ベランダからヒナの足が発見されました・・。 静止画


5/17 544 巣立ち(1回目の産卵で)
          親がエサで誘って、ついに1羽のヒナが巣立ちました。


  左上がヒナ 右下が親鳥

  巣立ち動画はここをクリック


○5/17 1349 巣立ちを迎えたその日の午後に、早くもスズメが巣材を
     くわえてくるのを発見しました。

5/19 さらに、巣立ちの2日後には、親鳥が巣の中で夜を明かす傾向が見られるように
    なりました。もう産卵・抱卵体制に入ったか!


5/28 事件その3 コシアカツバメが、集団で巣をにらみに来ました。



スズメにとって、巣の元々の持ち主であるコシアカツバメがにらみに来たのは
事件ですが、ツバメの側からするとスズメに乗っ取られたことが事件であり、
複雑な気持ちになります。

スズメの親鳥は、がんばって巣を離れず、コシアカツバメはこの巣に関しては、
あきらめたようです。

(校内の他の場所では、コシアカツバメが順調に子育てをしています。)



6/7 ヒナが1羽、孵っているのを発見!(SMさん)

6/15 親鳥のエサやりとヒナへの落ち着かせ行動  

             動画 (エサやりと落ちつかせ行動)

     親鳥は、エサをやったあと、ヒナをブロックし、ヒナより巣の奥へ
   もぐりこんで、ヒナを落ち着かせようとしているかのように見えました。
   確かにこうすれば、ヒナがエサを求めて巣の入口まで来て落下してしまうのを
   防げるように思います。


6/17 ヒナは親がいない間に、ひとりで羽を広げて、羽ばたきの練習を
    していました。(
Fさん)
                  動画(ヒナのはばたき練習)


6/20 1822 巣立ち(2回目の産卵で)

         巣立ち動画

     前回1回目(5/17)と違い、親は再三にわたり巣立ちを誘ったあと、
   エサをやるのをやめてヒナに巣立ちを促しました。
   ヒナが一度飛び立つのをためらったあと、勇気をふるい立たせて巣立った
   ように見えます。(
Y君)



           特3教室ベランダにて


スズメのカップルは協力して見事に子育てをしています。
その一方で、いろいろな障壁によ
り、巣立つことのできるヒナの数には
限りがあることがわかりました。

今回は、ハッカチョウに襲われる場面を確認しましたが、
身近なところでは、カラスに襲われることは容易に想像できます。
ツバメと同じように、天敵を避けるために、スズメもまた人との距離感を
縮めようとしており、そういう意味で、人の近くにいるツバメの巣を
乗っ取ったことは有効であったようです。

いろいろな生き物達の必死に生き抜く姿に触れ、人によって守られる
ツバメやスズメ達をかわいく思いました。

その反面、人の活動によって生息域をせばめられている生き物達も
いることを見落としてはいけないと、感じたりもしました。

理系生物選択者として、自然に対する思いを膨らませ、
これからも勉学や研究に励んでいきたいと思います。